第一章 --出会い--
あれは、入学式の日だった。
心地よい春の風が桜の花びらを巻き込みながら吹き抜けていった。
そんな心地よい風の中、俺は校門の前に立っていた、
「ここが今日から通う学校か。」
たぶんその心地よい風の影響もあったのだろう、一人で感傷にひたっていた。
そのとき、
「ふごっ!!」
訳のわからない言葉を発しながら、俺は前に飛ばされた。
「邪魔よ!そんな所に立っていると!」
俺は服についた土を払いながら、
「いてて、いったい何なんだ?」
と言いながら振り向いた、そこには少し栗色がかった髪の長い大人びた少女が立っていた、ど
うやら突き飛ばした張本人らしかった。
その女、俺と目が会うなり、
「じゃまよ!校門の真中なんかに立っていないでよ!」
と結構きれいな声で文句をいってきた、俺は一瞬かわいいと思ったが、
「邪魔だからって突き飛ばすことはないだろう!」
と言い返した、すると、
「うるさいわねえ!そんな所に立っているのが悪いんでしょう!」
とその顔と声からは創造もできないような言葉が飛び出してきた、しかし、俺はそれにひるま
ずに、
「うるさいって、突き飛ばしておいて言う言葉か!」
と言い返したが、すかさず、
「うるさいって言ったら、うるさいのよ!」
と言う自分勝手な言葉を残すと、少女はその長い髪を風になびかせながら走って校舎の中に
去っていった。
「何なのだ、あの女は!しかし、あのリボンの色からして同じ一年生らしいな、あんなのと三
年間一緒に過ごすのか、気が重くなるな・・・。」
俺はそう思うと春の心地よい風に吹かれながら教室に向かって歩き出した。
第二章 --同じクラス!--
俺は、廊下に張り出してあった味気ないクラス表を見てビックリした。
「何じゃこりは!同じ中学のやつが同じクラスに一人もいにゃいではにゃいか!」
なんと、同じクラスに知っているやつが一人もいないのだ、
「こんなことがあっていいのか!」
少し落ち込みながら仕方なく教室に行くと、
「あら、彼方はさっきの・・・!」
とどこかで聞いたような声が聞こえてきた、
俺がその声に振り向くと、
「あーーー!お前は!」
そこに居たのはさっき俺を突き飛ばした少女だった。
「さっきはごめんなさいね、ちょっと急いでいたものだから・・・。」
「だからって突き飛ばしていいという訳ではないぞ!」
「だから、謝っているじゃないの!」
なんと、その少女は開き直って反論してきた、
「謝ってすむ問題じゃないぞ!」
「いいじゃない、どうせ怪我とかしてないんでしょう。」
確かに怪我はしてなかった、
「だからと言って突き飛ばしていいと言うことにはならないだろう。」
「うるさいわね、あんなところに立っているのが悪いんでしょう。」
・・・俺はこのまま続けていても終わらないと判断した、
「まあいいか、ところでお前の名前は?」
「あら、突き飛ばした件はもういいの?」
「ああもういい、これ以上続けていても終わらない気がするからな。」
「そう、それならいいわ、私は美坂香里、香里でいいわ、彼方は?」
「俺は、北川 潤。」
「じゃあ北川君と呼ばしてもらうわ、いいでしょ、これからは仲良くしようね!」
知らない間に俺は、外見はそう悪くはないのだが性格に難があるこいつと友達になることに
なっていた。
「お前よくあんな奴と友達になったな!」
といきなり前の席のメガネをかけた奴が話し掛けてきた、
「いや、成り行きでそうなってしまったんだが・・・しかし、どうしてだ?」
俺は半分その質問はあたりだと思いながら聞き返してみた
「俺はあいつと同じ中学だったんだ、その時から顔はかわいいが性格が悪いと言ううわさが
立っていたんだ、そのうえ、あいつにアタックをかけようとして、人間不信に陥った男が何十
人もいると言う噂まであるんだぞ。」
そうか、そんなに性格が悪いのか、しかし、性格が悪いのは何か原因があるのではないかと
思って、まず自分なりにつくった性格が悪いパターン1を聞いてみた、
「もしかして、香里って金持ちのお嬢様か?」
金持ちでそこそこ美人!これこそがアニメや物語で定番の性格が悪いやつだ!というのが俺の
持論だ!!
「いいや、普通の家庭だ。」
チュドーーン・・・あ、お空を飛べてる・・・・・あっはは、なんか死んだおじいちゃんが見
えるような・・・・・・は!!、なんかあっちの世界に行っていたような・・・、まあいいか。
とりあえす、俺の持論その1は否定された、
「じゃ、じゃあ両親の片方がいないとか?」
「いいや、両方元気すぎるほど健在だ。」
俺の性格が悪いパターン2までもがつぶされた、
「じゃあ、何が原因なんだ?」
「さあな、それがまったくわからんのだ。ま、生まれつきなんだろうな。」
これでは、ひそかに計画していた俺の香里性格改造大作戦が実行できないではないか!などと
思っていると、
「そういえば、なぜか小学校低学年の時、わざと友達以外には八つ当たりのように接していた
という噂を聞いたことがあるぞ。」
とさっきのメガネからのナイスなヒントが聞こえてきた、
「しかもな、最近さらに性格がわるくなったらしい。」
「そうか・・・、たぶんはじめの情報から小学校低学年あたりでなにか身の回りで事件があっ
たんだろうな、そして最近になってそれがさらに悪い方向に行っているんだろう。」
俺は確信を持った、そしてさりげなく香里から聞き出してみることにした、
「お前何かくらい過去でも持っているのか?」
「な、何よ突然、なんか変なことでも考えているんじゃないでしょうね?」
・・・しまった、ちょっとストレートに聞きすぎたか、俺は少し後悔した、でも俺は開き直っ
て、
「別に、なんかあるのかなっと思ってさ。」
などと聞いてみた、
「別にあなたには関係ないわ。」
これは絶対何かある、俺は確信した、
その日の帰り、俺は香里の後をつけていた。
「しかし、どこまで歩くんだ?」
かれこれ、学校を出て30分は歩いている、
「たしか、こっちのほうは・・・。」
今向かっている方角には、この町唯一の病院しかなかったはずである。
「何か病気なのか?」
うつむいたりしているが、通院しなければならない程の病を持っているようには到底思えない。
これは最後まで確認する必要があるな。
などと思っていると、香里は俺に気付く事なく病院に入っていった。
「おっと。」
俺は置いていかれないようにこっそり後ろをついていった。
「あいつ、やっぱり病気なのかな?」
と思ったが、香里はさっさと診察室の前を通り過ぎ、奥の病室に向かって歩いていった。
「あれ、香里が病気じゃないのか?」
と思ってつけていくと、奥から3つめの病室に入っていった。
「誰か香里の友達でも入院しているのかな。」
と思って、病室をのぞこうとした時、
「何をなさっているんですか?」
と看護婦さんに話し掛けられ、
「え、いや友達がここに・・・。」
「申し訳ございませんが、ここの方は肉親の方のみの面会となっておりますので、お引取りく
ださい。」
と、見事に追い返された。
「くそ、絶対あいつの秘密を見つけてやる。」
と俺は余計意気込んだのだった。
第3章 --性格改造大作戦--
次の日、
俺は、昨日追い返された病室に入院している人を突き止めるために、例の病院の前まで来てい
た。
「よし、この格好なら入れるだろう。」
俺は看護士の制服を着ていた・・・・・
「なんか違うな・・・・。」
そうか、わかった。
俺は、看護婦さんの制服に着替えた、
「よし。」
俺は病院に入って、ナースセンターまでたどりついた、
「・・・これだな。」
俺は目的のカルテを見つけ、中を見ようとした。そのとき
「・・・あ、あなた誰?」
しまった!!看護婦に気づかれてしまった。
「え、ええっと新人の潤子です♪」
「け、警備員さん!!不信人物がっ!!」
しまった、内線電話で警備員を呼ばれてしまった。
俺はしかたなく病院の外まで逃げ出した。
「やっぱりだめか、コスプレ作戦は断念するしかないな」
(最初から無理だろうという突っ込みは無しですよ。)
「えーっと、次の作戦は・・・。」
俺はこりないでポケットから、『作戦メモ』と書かれてる紙を取り出して、
「・・・これで行くか。」
第二の作戦を選び出した。
「なあ香里、昨日誰のお見舞いに行ってたんだ??」
「・・・誰でもいいでしょ!!」
と言うと、香里はどこかに行ってしまった・・・・
「やっぱり本人から聞き出すのは無理か。」
第二作戦はもろくも失敗したのであった。
はじめに気づけよ、俺!!
最終手段、病室の名札を見る!!
「何で最初からこんな簡単なことに気づかなかったんだろう??」
と思いながら例の病室の前まできた。
「ええっと、『み・・・さ・・・か・・・し・・・お・・・り・・・』か・・・、美坂だっ
てぇ!!っと言うことは香里の家族なのか!!」
しまった、と思ったときはもう遅かった
「・・・北川君じゃない。」
しまった、見つかった!!
「・・・ちょっと来てくれる?」
・・・目が据わってる、これは反抗しないほうがいいな、
俺は言われた通りに香里のあとをついていった。
「・・・で、何をしにきたの?」
「え、何をしにきたって友達のおみま・・・・。」
「下手な嘘はつかないで、どうせ私が誰のお見舞いに来ているのか確かめに来たんでしょ?」
ばれているなら仕方がないな、
「ああ、そうだよ。」
「何のために?」
「いや、ちょっと気になったもんでな。」
「・・・何かたくらんでるんでしょ?」
はう、これもばれてる!しかし、今性格を直す大作戦を見破られるわけにはいかないのだ!
「いや、何にもたくらんでないよ。」
「じゃあ何でそんなに汗をかいてるの?」
知らない間にこんなに額から汗が・・・・
「い、いやこの病院の中暑いから・・・。」
「こんなにクーラーがきいてるのに?」
・・・もうだめかも
「とりあえず、このことはほかの人には絶対に言わないで!!いい、わかった?」
「わ、わかったよ。」
俺は香里のすごい威圧感にうながされるように返事をした。
「そう、わかったならいいわ。」
俺は香里の威圧感から開放されてホッとした、
「さて、知られたからには仕方が無いからついでにお見舞いしていきなさい。」
「は?」
俺は一瞬言っていることが理解できなかった、
「だから、せっかく来たんだからお見舞いしていきなさいって言ってるの!」
「え、でもいきなり見ず知らずの俺なんかが行ってもいいのか?」
「ええ、ぜんぜんかまわないわよ。あの子長い間入院してるからあまり友達がいないの、だか
ら私の友達がお見舞いに来てくれるだけで喜ぶと思うの・・・・」
なぜか、香里の顔がとても落ち込んで見えた・・・・
「・・・わかった、こんな俺でも助けになるって言うならお見舞いに行ってやるよ!!」
「え、ほんと?うれしいわ、じゃあ早速来て!!」
急に香里の顔が明るくなった気がした、
「栞、私のお友達がお見舞いにきてくれたわよ。」
病室の中には小さな琥珀色の花瓶に花がいけてあり、その横にあるベッドには香里に似た女の
子が寝ていた。
「この子がわたしの妹の栞。」
香里はその女の子の頭に手を置きながら言った。
「えーと、俺は北川潤っていうんだ。よろしくな。」
「・・・あ、どうもはじめまして北川さん。」
「じゃ、私は下で買い物をしてくるから。」
「え、おい香里・・・」
「それじゃ、二人で仲良くしててね♪」
というと香里は本当に買い物に行ってしまった。
「・・・えーっと」
「な、なんだ?」
「北川さんとお呼びしていいんですよね?」
「ああ、好きなように呼んでくれ。」
「そうですか。ところで北川さん、なぜ私なんかのお見舞いに?」
「なんでって香里にぜひお見舞いに来てほしいって言われたから。」
かなりごまかしている気がするが、うそは言ってないはずだ、
「そうですか、やっぱり・・・」
「え、やっぱりって?」
「お姉ちゃん、時々そうやってむりやりお友達にお見舞いにこさせるんですよ・・・」
「そうなんだ、今まで何人ぐらい来たの?」
「ええっとですね、お姉ちゃんが小学校3年生ぐらいのときから年に3〜4人は来てますから、
だいたい30人ぐらいですね。」
「そうか、その中でまたお見舞いにきてくれた人はいるの?」
「・・・いいえ、一人も。」
「そ、そうなんだ。」
「・・・はい。」
栞ちゃんの顔がとても悲しそうに見えた、
しまった、なんか雰囲気が暗くなってるぞ!?これはフォローしなくては・・・、
「じゃ、じゃあ、これからは俺がお見舞いに来てやろう。」
「え、ほんとに来てくれるんですか?」
栞ちゃんの顔がきゅうに明るくなった、
「うん、もし俺なんかでよければだけど。」
「ええ、ぜんぜんかまいませんよ。」
「じゃあ、一週間に一回は必ずお見舞いにくるよ。」
「はいわかりました、お待ちしています。」
栞ちゃんは笑って返事をしてくれた。
「ただいま。」
ちょうどいいタイミングで香里が帰ってきた。
「あ、お姉ちゃんお帰り、北川さんがねぇ、またお見舞いにきてくれるんだって。」
「そう、それはよかったわね。」
・・・しかし、なぜ香里は栞ちゃんの前だとこんなに性格が違うんだろう?
そうか、あの性格の原因は栞ちゃんなんだな!
とりあえず、毎週ここにはくることができるからそれとなく栞ちゃんから聞き出してみよう。
しかし、なんという偶然なんだろう・・・、うまいこと毎週こられるように約束してしまうな
んて・・・。
と、ちょっと考え込んでいると、
「北川君、そろそろ面会時間が終わるから帰るわよ。」
時計を見ると、既に午後4時を回っていた。
「もうこんな時間か・・・じゃ、栞ちゃんまた来週ね。」
「はい、お待ちしてますね、北川さん。」
それから毎週お見舞いに行くたびに香里の情報を入手していった、その情報とは、
第1:あのめがねから聞いた情報と栞ちゃんが入院した時期がほぼ同じころだということ。
第2:栞ちゃんの前と学校の中とでは性格では全く違うということ。
第3:これは栞ちゃんから聞いた話ではなく、偶然廊下で看護婦と医者が話しているのを聞い
て知ってしまったことだが、栞ちゃんはかなり重い病気らしくこの歳まで生きていることが奇
跡に近いということだ。
第4:香里たちの両親は仕事が忙しくなかなかお見舞いに来ていないらしいということ。
俺はこの4つの情報から香里の性格が悪い理由を推測することにした。
まず、第一の情報から確実に栞ちゃんが入院しているのと香里の性格が関連しているだろうと
推測される。
次に第二の情報から栞ちゃんと会っているときには性格が変わるらしい。
そして、めがねの情報と第三の情報から栞ちゃんの病状と香里の性格は連動しているみたいで
ある。
以上のことから、栞ちゃんの病気を治せば香里の性格も直る!!
っと言いたいところだが、それは無理なので第4の情報も考えてみる。
第4の情報から推測できることは栞ちゃんの状態を一番理解し、一番考えているのは香里ではな
いかということだ。
ということは、栞ちゃんの病状などがストレスとなり、栞ちゃん以外の人に無意識にストレス
を発散していると考えることができる。
・・・ま、推測だが。
とりあえず、お見舞いに行った帰りにでも香里から聞いてみることにした。
「なあ、香里。」
「なあに?北川君。」
「あのさ、なかなかいい店を見つけたんだが一緒にどうだ?」
「え、ええ?いいけど、いきなりなんで?」
「いや、ただいい店見つけたから一回友達といってみたいなと思ってな。」
「北川君のおごりならいくわ。」
しまった、今月は厳しいのに・・・これも作戦のためだしかたがない。
「しかたない、おごってやるよ。」
「それなら今から行きましょう。」
俺たちは、商店街にある百花屋という店に入った。
「ええっと、私はこのネバーギブアップね。」
「おれは紅茶。」
しばらくして出てきたのは、とてつもなく大きいパフェだった。
「・・・・おおきわね。」
「ああ、大きいな。」
俺たち二人はしばらく固まってしまった。
「おまえ、これ食べれるのか?」
「たぶん・・・・、むりね。」
「二人で食べよう。」
「それでも無理じゃない?」
「がんばるしかないだろう。」
なんせ、これ一個で4000円もするんだから。
「あーー、もう食べれない!!」
「私も無理よ、どうするの?」
「しかたない、残して出るしかないだろう。」
俺たちはそのまま店を出た、
「食いすぎて、歩けない。」
「じゃあ、ちょっと休憩しましょうか?」
「どこかにいい場所でもあるのか?」
「ええ、ついてきて。」
俺は香里のあとについていった、
すると、商店街の奥にある大きな噴水のある公園に来ていた、
「ここよ、北川君。」
俺たちは近くのベンチに座った。
「ふーー、もう吐きそう。」
「ごめんね、あんなサイズだとは思わなかったの。」
「値段から判断しろよ。」
「豪華な果物でも使っているんだと思ってたの。」
・・・・ある意味香里らしい勘違いだ。
「・・・・ところで、聞きたいことがあるんだが。」
「え、なに?」
「栞ちゃんのことだ。」
いっきに香里の顔が暗くなっていく。
「なにを聞きたいの?」
「いや、もしかしてお前ひとりで栞ちゃんのことを抱え込んでるのかと思ってな。」
「そんなことないわよ、そんなこと・・・・」
だんだん、香里の声が泣き声になっていく。
「北川君!!」
そういうと、香里は急に俺に抱きついてきた。
「栞は・・・」
香里は泣きながら話し始めた。
「あの子・・・幼稚園の時に・・・急に倒れて・・・それ以来入院したままなの・・・・。」
「そうか、そんな昔から入院しているのか・・・」
「そうなの・・・でね、・・・あの子のことを考えると・・・だんだんつらくなってき
て・・・」
それ以上は声にはなっていなかった。
「・・・自分ひとりで抱え込んでいて辛かったんだな。」
俺は香里の頭をなぜながら言った。
「これからは、俺に頼っていいんだからな。」
しばらくの間、香里はなきつづけた。
・・・・
「ごめんね、北川君。」
香里は泣き止んでいた。
「何がだ?」
「服、濡らしちゃって。」
「ああ、そんなこと気にするな。」
「それより、これからは自分ひとりで抱え込むんじゃないぞ!」
「ええわかったわ、これからは頼りにさせてもらうわ。」
それからは香里の性格は一変した、明るくなったとでもいうのか人に対しての接し方が明らか
にかわったのだ。
「なんか、香里じゃないみたいだな。」
とめがねが驚くようなかわりぶりだった。
それいらい、香里はクラス中の男子の人気ナンバーワンの存在になった。
第四章 −気持ちー
それはニ年生になったある日の出来事だった。
「今日は転校生を紹介するぞ。」
クラス中が湧き上がった。
「転校生って、女ですか?」
「転校生って言ったら女だろう。」
などなど・・・・。
「はい、静かに残念だが男だ。君入って。」
入ってきたやつは相沢祐一と言うらしい。
「ええっと、空いている席はっと・・・、水瀬の横だな。」
その位置は俺の目の前だった。
「よ、俺は北川っていうんだ、相沢くんだっけ?よろしくな。」
「ああ、よろしく。」
その後、水瀬から相沢が居候していることを知った。
「相沢くんあなた、名雪の家に居候しているんですって?」
「そうらしいな、相沢。」
「な、なぜそのことを?」
「名雪から聞いたの。」
「そう、水瀬本人から聞いたぞ。」
「あのバカ・・・」
相沢はあきれた顔をしていた。
「たのむ、クラスのやつには言わないでくれ。」
「ああ、わかった友達だからな。」
「へ、いつから友達に?」
「たった今からよ。」
その瞬間、香里の目は笑っていなかった。
「わ、わかった、その代わりほかのやつには・・・・」
「わかってるわよ、言わないわ。」
「北川も頼むぞ。」
「ああ、わかった。」
その後、下駄箱で名雪が相沢に怒られていた。
体育大会が終わってしばらくたったある日のことだった、
担任が、
「いつもは、三学期は期末テストしか行わないのだが、今年は来年三年生ということもあり進
路の参考にするために、実力テストを行うことになった。」
と言うとテストの予定表を配って出て行った。
先生が出て行くと同時にクラス中がブーイングの嵐になった。
「まじかよ、この学校は転校生いじめをするのかよ!」
「俺も、最近授業をまともに聞いてないからやばいな」
と相沢と会話していると、
「香里に教えてもらおうよ。」
とが言ってきた。
「そうだな、香里頼む、また教えてくれないか。」
「仕方ないわね、じゃあ今日放課後いつものところでね。」
「ありがとう、恩にきるぜ。」
「ごめん、私今日も部活があるから遅れていくね。」
「わかったわ、それまではこの二人を絞っておくから。」
と香里は不敵な笑みを浮かべた。
すると、相沢が、
「香里なんか怖いぞ!不敵な笑みを浮かべてどうしたんだ。」
「いいえ、どうもしないわよ、ふ・ふ・ふ・、じゃあいつものところで待ってるわね。」」
そう言うと、香里は教室を出て行った、
「いつものところって、いつもおしえてもらっているのか?」
「そうだぞ!一年のときからずーと教えてもらっているぞ。」
「香里ってそんなに頭がいいのか?」
「お前が知らないのは無理もないが、あいつは一年のときからずっーと学年一番をとっている天
才だ。」
「・・・知らなかった。」
「まあ無理も無い、お前はここに来たばかりだからな。今日の放課後になればわかるよ。」
そして、放課後・・・、
香里の鬼教師ぶりは板についていた、
「相沢君、そこのthatを訳し忘れるとまるで意味が通らなくなるわよ。」
「北川君、ギルドは中世と関係ないでしょう。」
・・・・・・・
「・・・・なるほど、わかったよ。」
「そうだろ。」
「こら!おしゃべりしていないで、集中する!」
「わかりましたよーー。」
「判ったら早くやる!!」
『はーーい』
「はい、わかったら早くやる。じゃないと帰れないわよ!!。」
『ういーーす。』
香里に止められて、結局帰れたのは夜の8時だった。
翌日、俺が用事があって遅れていくと、
「悪い、用事があったんだ先に帰るわ。」
「ごめん、私も。」
と水瀬と相沢の二人が言い出した、
「おい待てよ俺一人だけでこの厳しい授業を受けろっていうのか。」
と訴えたが、二人は、
「バイバイ、北川」
「バイバイ、北川君。ふぁいとだよ!」
と水瀬が小さくガッツポーズをすると冷たく帰ってしまった。
俺は何にがんばればいいのだろうと思いながら俺は見送るしかなかった、
その後、二人っきりで勉強していたら、
「私たちも、もうそろそろ帰ろうか。」
と香里が言ってきた、時計を見てみるともう9時を回っていたので、
「そうだな、そろそろ帰ろうか。」
と返事をして荷物をかたずけて学校を出た。
その後、香里の後について駅のほうに向かって歩いていたら、
「北川君・・・、ちょっといい?」
と香里が話しかけてきたので俺が、
「別にいいけど。」
と答えると、
「じゃあ、ついてきてくれる。」
俺が素直に香里の後についていくと、
そこは、前香里が俺になきついてきた場所だった。
「実はね、北川君。」
俺はなんだろうと思いながら、
「とりあえず座って。」
と香里にすすめられてベンチに座った、
「で、なんなんだ?」
「実は、・・・・・・。」
「何だよ、早く言えよ。」
俺は、はっきりしない香里をせかした、
「実は、・・・・・私、北川君のことが好きなの!」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・っえ?」
俺は一瞬思考が停止した。
「なっ、なにーーーーーーーーーーーーーっ。」
俺は思わず立ち上がって叫んでしまった、そしてすぐに回りの厳しい視線を感じベンチに座り
なおした。
「そっ、それは、本気で言っているのか。」
「ええ、本気よ!」
な、なんと俺は告白を受けてしまった!!
恋のキューピットよ、ありがとう・・・なんていっている場合ではない。
「実はね、今日名雪たちが早く帰ったのも、私がお願いしておいたからなの。」
そうか、それで水瀬が『ふぁいと』と言っていたのかと思っていると、
「それで、あの・・・返事なんだけど。」
「今日でないとだめか?」
「いえ、そうではないけど・・・・。」
「じゃあ明日帰り道で返事を伝えるそれでいいな。」
「ええ・・・。」
その日は、それで別れた。
・・・・・・・・・
次の日は一日じゅう何も手につかなかった、
「よう、どうした?」
と相沢に話し掛けられても、
「ああ、別に。」
としか返事が返せなかった。
そして、その日の帰り、俺は香里を待って校門の前で立っていた。
「お待たせ。」
「いや、別に待ってはいないが・・・とりあえず公園に行こうか。」
香里は黙ったまま俺の跡をついてきた。
「昨日の返事だが・・・・・・・。」
俺と香里は公園のベンチに座った、
「俺の返事は、・・・・・。」
俺は決心を決めるために間を置いた。
「俺の返事は、・・・・・・OKだ!」
「え!」
「聞こえなかったのか、OKだといったんだ。」
「それは本当?」
「うそを言ってどうする、本当に決まっているだろうが。」
「うれしい。」
香里は俺の胸に抱きついてきた、
「おい、周りに人がいるだろうが。」
「いいじゃない、私たち付き合ってるんだもの、今からだけどね。」
「・・・・・それもそうだな。」
俺はそう言うと、香里を抱きしめた。